Dialogue(対談)
理事長
上田早記子 × 板東英二様
坂東さん:代表が法人運営を始めるきっかけは何だったのですか?
代 表 :私は30歳ごろまで「四天王寺大学大学院」に身を置いており、人間福祉
学の研究をしていました。その後は研究者として大学に勤めていました。
そして、最初は研究助成金を得る目的で、大学院時代の仲間と共同で研
究・調査などを行う「NPO法人 オルト・クラブ」を設立したのです。
坂東さん:ほう。そこから福祉事業に展開されたのには、どのような経緯が?
代 表 :設立から半年ほどした時、福祉活動をしていた私の母から、あるご家庭
の相談を受けたのです。5人兄弟がいる母子家庭で、母親が色々と事情を
抱えている。家庭の生活リズムが不規則になり、子どもたちは学校や保育
所に行けていない。支援に関われるのは私の母だけで、他の人は会うこと
すら拒まれる。そんな状況を聞き、そのご家庭の課題を解決するためには
何をすべきかと考えました。そこで、まずは生活リズムを整えようと、ヘ
ルパーを派遣する居宅介護事業所「音色」をスタートしたのです。母と顔
が似ている私なら、ヘルパーとしてそのご家庭に入っていけましたから。
坂東さん:一つのご家庭との出会いから、
スタートした福祉事業だと。
現在は放課後等デイサービス
もされていますが?
坂東さん:子どもたちに寄り添いながら、支援の幅を広げてこられたわけだ。
代 表 :私たちが関わる子どもたちは、勉強はもちろん、家族や友人との人間関
係であったり、恋愛であったり、色々悩みを抱えています。そうした部分
まで対談できるような放課後デイサービスが他になかったので、だったら
作るしかありませんよね。目の前に改善しないといけない課題があり、解
決する方法を考えてきた。それだけのことです。
もちろん子どものことも大切に思っていますが、私は「想い」だけで何
かを変えられるとは思いもません。「想い」だけでは何かを変えられると
は思いません。「想い」だけでは成し得ない課題解決のために、仲間と共
に法人という形で、継続的且つ安定的なサポートを目指しています。
坂東さん:福祉業界で上田代表のような方は珍しいように思いますが、「想い」ば
かりは強調しないほうが私としては信頼できますね。ぜひ今後に期待した
いです。
代 表 :ありがとうございます。今いる子どもたち、これから出会う子どもたち
と関わる中でこの先も新たな困りごとは出てくることでしょう。その課題
を解決するために、今後も適切なサポートを行っていきたいです。必要性
があれば新たな事業所も始めるかもしれないですね。
代 表 :そのご家庭には毎朝伺い、まずはこど
もたちを学校や保育所に行かせるところ
から始めました。今では子どもたちも普
通に学校や保育所に通えており、母親も
朝早くに起きて子どもたちのお弁当を作
れるようになっています。ただ、子ども
たちが学校に行くようになると、勉強に
追いつけないという新たな悩みも出てき
ました。そこで、別法人「リブアネスト
合同会社」を設立し、放課後デイサービス
「Weave」の運営も始めたのです。
雑誌『マスター』2019年6月より抜粋。